年金は本当に破綻する?老後の不安を「数字」に変える資産形成の始め方
「将来、年金はもらえなくなるのでは?」
「年金だけで老後の生活を支えられるの?」
こうした不安を感じたことがある方は、少なくないのではないでしょうか。
今朝のライブでも、年金の話をしました。年金については、以前から「制度が破綻する」「将来は受け取れなくなる」といった強い言葉が繰り返し使われてきました。
不安を感じるニュースほど記憶に残りやすいものです。実際の制度がどうなっているのかを確認しないまま、漠然と心配し続けている方もいらっしゃると思います。
けれども、老後のお金を考えるうえで大切なのは、年金を「もらえる・もらえない」の二択で考えることではありません。
まずは、自分が将来受け取れる年金の見込額を確認すること。そして、希望する暮らしに対して、あといくら準備すればよいのかを数字にすることです。
不安は、正体が見えないと大きくなります。反対に、数字が見えると、具体的な対策を考えられるようになります。
目次
公的年金は「なくなるかどうか」の二択ではない
日本の公的年金制度では、少なくとも5年に一度、「財政検証」が行われています。
財政検証とは、人口、労働参加、賃金、物価、経済成長などについて複数の前提を置き、おおむね100年間にわたって、年金の給付と負担のバランスが保たれるか、将来の給付水準がどの程度になるかを確認するものです。
2024年の財政検証でも、さまざまな社会・経済の前提をもとに、長期的な年金財政の見通しが示されています。
ここで押さえておきたいのは、財政検証が「将来も現在とまったく同じ金額を受け取れる」と保証するものではないということです。
一方で、「年金制度が近いうちに消滅し、誰も受け取れなくなる」と単純に考えるのも、実際の制度設計とは異なります。
公的年金は、社会や経済の変化に応じて、給付水準や制度内容を調整しながら継続させていく仕組みです。
だからこそ、老後資金を考えるときは、年金をゼロとして考えるのでもなく、年金だけに頼るのでもなく、自分の年金を土台として不足分を準備する、という考え方が現実的です。
私たちの年金積立金はGPIFが運用している
日本の公的年金は、現役世代が納める保険料を、その時々の年金給付に充てる「賦課方式」が基本です。
それに加えて、将来世代の負担が大きくなりすぎないよう、年金積立金が保有されています。この年金積立金を管理・運用しているのが、GPIF、正式名称を「年金積立金管理運用独立行政法人」といいます。
GPIFが公表した2025年度の運用実績は、次のとおりです。
| 項目 | 実績 |
|---|---|
| 2025年度の収益率 | +16.47% |
| 2025年度の収益額 | +41.4兆円 |
| 2025年度末の運用資産額 | 293.6兆円 |
| 2001年度以降の年率収益率 | +4.67% |
| 2001年度以降の累積収益額 | +196.9兆円 |
出典:GPIF公式サイトおよび厚生労働省会見資料。数値は2026年7月時点で確認できる公表情報に基づきます。
ただし、2025年度の+16.47%という数字だけを見て、「投資をすれば毎年これだけ増える」と考えることはできません。GPIFの運用でも、1年間ではマイナスになることがあります。
資産運用は、単年度の成績ではなく、長い期間で考えることが重要です。
GPIFに学ぶ4資産分散投資
GPIFの基本ポートフォリオは、現在、国内債券、外国債券、国内株式、外国株式の4つの資産を、それぞれ25%ずつ保有する構成になっています。
| 資産 | 基本の構成割合 |
|---|---|
| 国内債券 | 25% |
| 外国債券 | 25% |
| 国内株式 | 25% |
| 外国株式 | 25% |
株式は、経済が成長する局面では大きなリターンが期待できます。一方で、金融危機や景気後退などが起きたときには、価格が大きく下がる可能性があります。
債券、国内資産、外国資産など、異なる動きをする資産を組み合わせることで、ひとつの資産が下がったときの影響を和らげることができます。
もちろん、個人がGPIFと同じ割合をそのまま再現すればよい、という意味ではありません。
GPIFと個人では、運用する期間、使う目的、必要な現金、受け入れられる値動きが異なります。
参考にしたいのは、具体的な割合よりも、ひとつの国や資産だけに集中しないこと、短期的な値動きで運用方針を頻繁に変えないこと、長期的な目的に合わせて資産を組み合わせることです。
資産形成では、「今年一番上がりそうなものを当てること」よりも、「予想が外れても続けられる仕組みをつくること」が大切です。

最初に確認したいのは、自分の年金見込額
老後資金の準備というと、すぐにNISAや投資信託の商品選びから始めたくなるかもしれません。
しかし、その前に確認したいのが、自分が将来受け取れる年金の見込額です。
日本年金機構の「ねんきんネット」では、現在と同じ条件で60歳まで年金制度に加入した場合のかんたん試算に加えて、今後の働き方、受給開始年齢、未納分を納付した場合など、条件を変えた詳しい試算もできます。
老後資金を考える際は、次の順番で数字を整理してみましょう。
- ねんきんネットやねんきん定期便で、年金の見込額を確認する
- 老後に必要な生活費を考える
- 年金との差額を計算する
例えば、老後の希望生活費が月25万円、年金見込額が月20万円であれば、毎月の不足額は5万円です。年間では60万円、20年間では単純計算で1,200万円になります。
実際には、税金、社会保険料、物価上昇、資産運用、退職金、生活費の変化なども考慮する必要がありますが、最初の目安としては十分に役立ちます。

年金プラスアルファを準備する
自分の年金見込額と不足額が見えたら、次に「どのように準備するか」を考えます。
選択肢のひとつが、NISAやiDeCoです。
NISAは、口座内で投資した金融商品から得られる売却益や配当・分配金が非課税となる制度です。
iDeCoは、自分で掛金を拠出し、自分で運用方法を選び、公的年金にプラスして老後資金を準備する私的年金制度です。掛金の所得控除などの税制上のメリットがある一方、原則として老後まで引き出せない点も考慮する必要があります。
どちらが適しているかは、年齢、収入、家族構成、現在の貯蓄、住宅購入や教育費の予定、老後までの期間によって変わります。
制度を使うこと自体を目的にするのではなく、何のために運用するのか、いつ使うお金なのか、途中でどの程度下がっても続けられるか、毎月いくらなら無理なく積み立てられるかを整理したうえで活用することが大切です。
自分が働く収入と、お金が働く仕組みを両輪にする
現在は、65歳を過ぎても元気に働く方が増えています。
仕事を続けることは、収入を得るだけでなく、社会とのつながりや生活の張りを保つことにもつながります。
一方で、自分が働くことだけに老後の家計を頼ると、病気や体力の変化によって働けなくなったときに、家計が不安定になる可能性があります。
そこで考えたいのが、自分が働く収入と、資産が生み出す収入や計画的な取り崩しを組み合わせる、という考え方です。
毎月1万円、2万円という金額でも、資産から補える仕組みがあれば、その分だけ働く時間を減らしたり、趣味や家族との時間に使ったりできます。
「一生働かなければ生活できない」という状態から、「働き方を自分で選べる」という状態に近づけることも、資産形成の大切な目的です。

年金を知ることが、老後準備のスタート地点
公的年金があるから、老後の準備を何もしなくてもよいわけではありません。
反対に、「年金はどうせもらえない」と決めつけて、最初からゼロとして考える必要もありません。
大切なのは、自分の年金見込額を確認すること、希望する老後生活との差額を計算すること、不足分をNISAやiDeCo、預貯金、就労などで準備することです。
老後資金への不安を小さくするのは、楽観的な予想でも悲観的なニュースでもありません。
自分の数字を知り、今できる準備を始めることです。
まずは今日、ねんきんネットを開き、将来の年金見込額を確認するところから始めてみましょう。
数字がひとつ見えるだけで、「なんとなく不安だった老後」が、「これから準備できる未来」に変わり始めます。
参考:GPIF「年金積立金の運用目標」、GPIF「長期的な観点からの運用」、GPIF「基本ポートフォリオ」、厚生労働省「令和6(2024)年財政検証結果」、日本年金機構「年金見込額試算」、金融庁「NISAを知る」、iDeCo公式サイト
※本記事は、資産形成や公的年金制度に関する一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品の勧誘や個別の投資助言を目的とするものではありません。金融商品には価格変動などにより元本割れとなる可能性があります。制度や税制は今後変更される場合があるため、実際の利用にあたっては最新の公式情報をご確認ください。
家計や資産形成を考えるとき、まず大切なのは「わが家の場合はどうか」を見えるようにすることです。
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お金の不安を責めるのではなく、これからの選択肢を考えるきっかけとしてご活用ください。

